私の師匠
職場の技能員の方に久々に会った。
自然のことに詳しいからこそ、いい具合に適当な世話の仕方をする。憧れである。
今朝、会ってすぐにカナヘビのことを伝えると、死因を一緒に考えてくれた。
「暑さですかねーやっぱり。カナヘビは暑いと土にもぐっているからね。土から出てこないですよ。水をパーってかけると出てくるんですよね。」
それくらい暑さに弱いのか…。飼育ケースに土を入れていたけど、それは浅く、土すらもあったまってしまっていたのは確かだ。
血栓について聞いてみた。
「餌かなぁ。共食いではないですよね。なんだろう。餌に何かあったのかな。」
と、これは疑問のまま終わった。
でも餌について教えてもらった。
メロンの破片を置いてわざとコバエ寄せ集めカナヘビの餌にさせる。
何の餌だっけな?忘れたけれど、粒状の餌をたべさせたかったら、斜めに設置した木の板から餌を転がすと、生きものだと思ってそれを食べることもあるらしい。
口の周りが青かったことについては、「もしかしたら、死ぬ時にすごく苦しんだのかもしれないね。でもカナヘビの死に際は、スーッと死んでいきますよね。」
と、なぜ青くなったのかはっきりしなかったこと、そして苦しんだと聞いて、再び悲しくなった。
大人のカナヘビが赤ちゃんカナヘビに噛み付いた話をしたら、驚いていた。
「やはり共食いすることもあるんですね。虫とかね生き物同士でも、ケンカならね、甘噛みで終わりますよね。でも、食べる気で噛まれたらそれは噛まれた方はダメ(死ぬ)ですね。内蔵とか大切なものが詰まってるわけだから。」
そこで、私はカナヘビの体の中を調べてみたいんだ。と話をすると、骨格標本の作り方を教えてくれた。
もし、死んでしまったカナヘビを見つけたら、チャレンジしたい。
この方、小さい時から色んな動物をとっては育てていたという。特に鳥が好きだったと。鳥小屋はその辺の木や枝を使って自分で作ったりしたそうだ。ブタも育てていたと。ブタは母親のプレゼントの資金や暮らしの中でお金が必要になったら売ったりするといったふうであった。
自然と暮らしが密接である。
とにかく生き物が好きだと、楽しそうに話してくれた。
前に、子どもたちが大量にカナヘビを捕まえた時があった。
ものすごく細い枝がたくさん入ってて、下の方には土と落ち葉が少し入っている、おっきなポリバケツを持ってきてくれた。
私は、「えっ、ポリバケツ…外も見えないし大丈夫か。」と思っていたが、「大丈夫です。」とすごい優しい顔なんだけど自信が伝わってきたので、そのまま飼った。大量のカナヘビはその中で交尾し、卵も産んでいた。
必要なことだけやれば、生き物は大丈夫なんです。手をかけすぎてもダメなんです。と言っていた。
最後に、
「カナヘビが死んで、こんなに悲しいことってあるのか…と思うほど、本当に悲しかった。何でだろう。」
そう私が話すと、
「先生、いい夏を過ごしたじゃないですか。」
とんでもなく優しい目でそう言った。この言葉は震えた。
私はこの人についていこうと思った。